二酸化塩素の化学式は「ClO2(ClO2、欧米では「OClO」と記載することも多)」と記載され、常温では気体ですが、水によく溶解し、水溶液は黄緑色~茶褐色を呈する物質です。
二酸化塩素は塩素原子を分子中に含みますが、現在盛んに利用されている塩素剤や次亜塩素酸塩とは異なり、水中の有機物と反応して有害な有機塩素化合物類(発癌物質トリハロメタンなど)を生成することがほとんどないことなどから塩素剤の欠点を補う有望なサニタリー資材として注目を浴びています。
近年では、欧州において医療分野で一般的な「グルタラール」の発癌性が指摘されるに及び、日本国内でも急速に二酸化塩素が見直され始められました。
大手製薬会社様のテレビCMをはじめとして、薬局や雑貨屋さんなど、いろいろな所で「二酸化塩素」という言葉を一般的に目にする機会も増え、ご存知の方も多いかと想います。
酸化力が非常に強く、次亜塩素がアルカリ領域で効果を減ずるのに対し、ph10程度まで有効に作用します(その為、塩素剤の効果が期待出来ない高アルカリ温泉等での利用にも適します)。
細菌に対する殺菌効果はオゾンに次ぐ優れたものであることが数々の実験で確認されており、また悪臭の原因物質(硫化水素、アルデヒド類、カルボン酸など)を酸化分解する優れた消臭効果を併せ持ちます。
※多くの実験結果を総合的に判断すると、殺菌力では「オゾン>ClO2>塩素」と言われています。
なお「二酸化塩素」を容易に運搬・使用するために安定加工した「安定化二酸化塩素」は反応が遅効性のため、「二酸化塩素(ClO2)」とは異なり、より消臭等の用途向きと言われています。
※「安定化二酸化塩素」は「ClO2を安定的な状態にさせたもの(化学物質)一般」や、その加工物を指すため、化学式では一律には表現出来ません(メーカー・商品ごとに異なります)
実用に供される二酸化塩素については、各種調査で環境・安全面でも十分な評価を得ており、国内では水道水の原水消毒(注入)やプール・浴場の殺菌、小麦粉漂白等での使用が認められています。
その他、食品・医療、農畜産・水産業など、衛生管理の徹底が求められる分野で広く導入され、また導入事例が急増しています。
しかし、水道水(原水)やプール、浴場などの殺菌・消毒に用いられることからお分かり頂けるように、用途・濃度・取り扱い等によっては当然、安全を損なうことがあります。
事前の十分なご理解と施工の際の注意を怠らないよう、お願いいたします。
特に二酸化塩素ガスの吸引は頻繁に発生している事故で、非常に危険ですので、十二分にご注意下さい。
以上を踏まえて弊社では、二酸化塩素は専門的な知識を有する方による、業務用利用に供することを基本姿勢としております。
長年、二酸化塩素関連の様々な製品・商品の製造・販売、そして開発や研究に携わってきて、いまだにいろいろなことを考えますし、また感じ、そして勉強させられます。
もっとも「それは二酸化塩素を身びいきし過ぎじゃないだろうか…」というものから、逆に「二酸化塩素の評価が今一つ、納得できないな…」などの、極ごくシンプルなものも多いのですが…そして、もちろんニュースに対して想うこと、など。
「二酸化塩素のご案内」を入り口にした「二酸化塩素etc.」のコーナーでは、「二酸化塩素FAQ」とは別に「二酸化塩素」というものをめぐって感じたことなどを中心に、軽いコラムをご提供出来ればと想っております。
二酸化塩素をめぐる、あれこれを、ブログにするほどではないですけれど、ご一緒に感じたり、考えたりして頂く機会になれば幸いです。
※よくお寄せ頂くご質問に関しては、「二酸化塩素FAQ」を設けておりますので、ご参考下さい
二酸化塩素etc.01:二酸化塩素の「ガス問題」
二酸化塩素etc.02:再論:「安定化二酸化塩素」とはなんなのか?
「二酸化塩素」についてネットでも様々な情報、それも以前よりも精度や客観性の高い情報が多くみられるようになってきました。
しかし、いつまで経っても終わらないというか、定まってこないというか、複雑な気持ちにさせられるのが「二酸化塩素のガス問題」です。
この問題の大前提となるのは「二酸化塩素に限定されず、同様の効果を発揮するものは、いくらでもある」ということではないでしょうか?
塩素ガス然り、オゾン然り、です。実際、一時期そして今に至っても、たとえば「オゾン発生器」は製造・販売もされています。
ご存知の方も多いかと想いますが、この「オゾン発生器」においては、二酸化塩素ガスと同様の問題が持ち上がっており、オゾンが先行しているからでしょうか、すでに国民生活センターからは、概略、「一般家庭でのオゾン発生器の購入は控えるべき」という内容の報告書が出ています。
ご参考)
家庭用オゾン発生器の安全性
では、これは「オゾン発生器の全否定」かというと、そうではないようです。上記の報告書にも「使用方法によっては危険なオゾン濃度となる」という記載があります。
「使用方法」「危険」「濃度」…「二酸化塩素ガス」においても、ほぼ同じ問題が提起されてることが分かります。
「ミスト」に「吸着」させて落下させる(再浮遊しないようにふき取るなどしないと意味がありませんが…)、あるいは吸引・フィルタリングという手法(これにもミストに似た問題と、フィルターでの繁殖問題もあることはあります)などの方法もあることはあります。
しかし、そうではなくて「空気中に浮遊するウィルスや菌を化学物質(特にハロゲン)で…」となると、結局、どのような資材を用いたとしても「人体への加害」を覚悟しなくてはなりません。
弊社は「二酸化塩素ガスの空間への適用」に対して非常に慎重かつ消極的ではありますが、完全否定と考えているわけではありません。
実際、ニッチながら、限定的な空間における安全で素晴らしい商品を開発・販売されている業者様もいらっしゃいます。そのような開発可能性まで閉ざしてしまうことには疑問を感じざるを得ません。種々多様な問題や課題を解決するためには、どうしてもチャレンジが必要だからです。
ただ「二酸化塩素ガス問題」を拝見すると、「二酸化塩素ガスの測定が可能であること」と「一定濃度以上は、少なくとも米国での二酸化塩素ガス規制があること」から、既にほぼ結論が出ているのではとも感じております。「効果を出そうと思うと、(この基準では)低濃度過ぎて難しい」「扱うにしても用法自体を工夫する必要があるだろう」ということです。
参考までに、米国での二酸化塩素ガスの規制(労働環境下)は概略、下記のようなものです。
◆労働安全衛生局(OSHA):8h/日の暴露限界(TWA:時間加重平均値)=0.1ppm
◆米国産業衛生専門家会議(ACGIH):8時間/日又は40h/週の暴露限界(TWA)=0.1ppm・15分間TWA(STEL:短時間暴露限界)=0.3ppm
※弊社手持ち資料でも、この数値は長らく変わっておりませんし、国民生活センターも、この数値を基準として検討した模様です。
参考)
二酸化塩素による除菌をうたった商品 -部屋等で使う据置タイプについて-
なお、過去に問題化した経緯には「インフルエンザ予防」を謳ったこともあったようですが、これは薬事法上の問題となってきますので、ここでは取り上げません(ただ水道法やプールなどの関連法において、二酸化塩素については「消毒」や「殺菌」という言葉が公文書上、用いられていることは指摘させて頂きます)。
万能の商品は、追い求められてはいますが、現実には中々ありません。
その中で製造品や商品がどうあるべきかは常に問われ続けなくてはならないしょう。
いずれにしても、二酸化塩素ガスの吸引については、くれぐれもご注意下さい。
「安定化二酸化塩素」というのは、濃度の安定性に乏しく、流通や保存、取り扱いの困難さを伴う「純粋二酸化塩素(水溶液)」よりも簡便なように感じるためか、手軽に取り扱われる業者さんも多いです。それはそれで悪いことではないのですが、「二酸化塩素(ClO2)の効果」がそのまま謳われていたりするので、ご利用者様からすると非常に戸惑われ、混乱されていることも多いようです。
実際、お手元品に関するお問合せを頂戴した際、まず最初にお伺いするのが「お問合せ頂いている二酸化塩素の色はどうですか?臭気はどうですか?」という質問なのですが、「手元の二酸化塩素の色は…無色です、臭いは…ありません」というご返答が圧倒的に多く(ほぼ100%と言えるでしょう)、「それは、安定化二酸化塩素と言って純粋二酸化塩素(水溶液)とは異なるもので…」というご説明を繰り返すというのが、ひとつの「パターン」にまでなっています。
もっとも安定化二酸化塩素についてご説明しても、反応は芳しくはありません。
というのも「二酸化塩素(水溶液)」は外見上、黄緑~黄褐色を呈し、臭気は塩素とオゾンを混ぜたような独特のもので慣れていれば比較的、容易に見分けがつくのですが、「安定化二酸化塩素」は、ほぼ無臭、ほぼ透明で、ほとんど水に等しい外見だからです。また化学的にも下記の通り、ご説明しにくい点があり、面倒に感じられるようです。
安定化二酸化塩素を化学的にご説明する際、最も参考にしやすいのは「塩素」と「次亜塩素酸Na」の関係でしょう。
「塩素(Clガス)」を、いわば安定化させた代表的な化合物として「次亜塩素酸Na(NaClO)」があり、
2NaOH+Cl2→NaCl+NaClO+H2O
という反応式から得られるわけですが、実際には「安定化させた塩素(いわば安定化塩素)」は多数あります。
そのため、仮に「安定化塩素」といった場合、直ちに「次亜塩素酸Na」を意味するとは考えにくい関係にあります。
「(安定化)二酸化塩素」も同様の状況にあり、こここそが「安定化二酸化塩素」の最も厄介なとこのひとつです。
つまり「安定化させた二酸化塩素(安定化二酸化塩素)」は多数あるのですが、その化学式は特定ではなくとも皆無というわけではありません。
むしろ下記のような事情もあり、「安定化二酸化塩素」というのは「化学物質」というよりも「商品群」と言うべきだと、弊社は考えております。
一般に、二酸化塩素を生成する、あるいは生成され得るとされている物質には「亜塩素酸類」「塩素酸類」などがあります。
そして、これらの物質は、すべてが「安定化二酸化塩素」と称せられる可能性があります(活性化すると二酸化塩素を放出する性質があるため)。
具体例として二酸化塩素生成物質(前駆物質などとも呼ばれます)として公表されているパテント情報を参考にしてみますと、「亜塩素酸アルカリ金属塩」として「亜塩素酸ナトリウム」「亜塩素酸カリウム」「亜塩素酸リチウム」が挙げられ、「亜塩素酸アルカリ土類金属塩」として「亜塩素酸カルシウム」「亜塩素酸マグネシウム」「亜塩素酸バリウム」などが挙げられます(例えば「WO2009093540」)。
また肝心の「安定化二酸化塩素」と称されるものの化学式はというと、やはり代表的なものとしては「NaClO2(亜塩素酸Na)」や「LiClO2(亜塩素酸Li)」、「KClO2(亜塩素酸K)」といったところが挙げられることが多いです。
つまり「いろいろな安定化二酸化塩素がある」という状況です。
しかしながら同時に、特に変則的なものでなければ、資料も豊富な「NaClO2(上述の「次亜塩素酸Na」に相当します)」という化学式の形に二酸化塩素を安定させたものであることが圧倒的に多いでしょう。
(比較的、流通量の多い「安定化二酸化塩素」の化学式「NaClO2(亜塩素酸Na)」の「原料」は「ClO2(二酸化塩素)」です)
ちなみに「二酸化塩素の歴史」を見ると、二酸化塩素生成に用いられた、いわば安定化二酸化塩素は、まず「KClO3(塩素酸K)」、その後「NaClO3(塩素酸Na)」という歴史的経緯があることはあるようです。このあたりの事情も、後に「安定化二酸化塩素」という言葉を難しくする一因になったかもしれません。
※歴史的に最も古い二酸化塩素(の発見)は、塩素酸Kと濃硫酸とを加熱して黄緑色の気体を得たとするChenevix(1802年)だといわれています(参考)
さて上記のような事情を踏まえ、たとえば同じ「NaClO2」なんだから…ということで「亜塩素酸ソーダが安定化二酸化塩素のことなんですよ」とするのは、一般論としては良いかとは想いますが、弊社としては厳密には違うという考え方をしています。
また二酸化塩素を安定化させた「安定化二酸化塩素」の化学式自体には、上記したように「NaClO2」や「LiClO2」「KClO2」くらいしかないとしても、
「二酸化塩素資材として利用するために、どの程度の濃度を、どのように安定させるか?」
といった細かやかな調整や商品テーマは、当然にメーカーや商品毎に異なるのに、たとえば「NaClO2」だから「亜塩素酸ソーダ」と称するのも乱暴、かつ「亜塩素酸ソーダ」メーカーさんに対しても失礼な話で、やはり「安定化二酸化塩素」は「一般的な商品群の名称」と考えることが適当だろう、というのも弊社結論の理由のひとつです。
*工業用品としての「亜塩素酸ソーダ」は、むしろ二酸化塩素が発生しない位に「強く安定化」させます
かように面倒なお話にお付き合い頂き恐縮至極なのですが、事情が複雑なため、ご理解とご容赦を賜れれば幸いです。
上記が、弊社にて把握している限りの「安定化二酸化塩素という名称をめぐる状況」となります。
◆一点、「E.P.A.」という言葉を見かけたため、「E.P.A.上の二酸化塩素」についても少し記載しておきます。
「E.P.A.」は「アメリカ合衆国環境保護庁」のことですが、「US E.P.A.」で調べて頂くと、いくつかヒットしてくると想います。
この「E.P.A.文書」では確かに「安定化二酸化塩素」を認めているようですが、一義的には「International
Dioxcide, Inc. 」という米国の会社の「Anthium
Dioxcide」という商品に対するものになります。そして、その文中に「stabilized chlorine
dioxide(安定化二酸化塩素)」という単語や表現が出てくる、そういう関係になっています。
参考)US
EPA, Pesticide Product Label, ANTHIUM DIOXCIDE,09/06/2016
文書を御覧頂ければわかるように、注意すべきは、効果を発揮するのは「安定化二酸化塩素が活性化した状態」あるいは「遊離二酸化塩素(ラジカルな状態)」のことを意味しているので、「安定化二酸化塩素の状態のままの希釈濃度」ではない、という点でしょう。
他にも「E.P.A. Anthium Dioxcide」で検索して頂くと、いくつか公文書が見れるので、ご参考下さい。
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